この本も大正時代になって、伊藤家が断絶したため明らかにされた本です。下にその時の本の説明文を転記してみます。
此定跡は将棋家元の三家の一つ伊藤家に秘密として伝へ「秘中の厳秘にして他門へ漏すを許さず」と称せられたるものにて僅に平手十番のみなれども変化口伝を詳細に説明したれば能く研究する時は何れの将棋に応用しても利益すること多かるべし、而して将棋の本源は平手相掛りを第一とすれば此書は先ず相懸りに於いて特に詳細を極めたるものと思はれたり。
編次の体裁は初めに普通の定跡を掲げ其中につきて変化を説きたるものにて「口伝」とあるは普通定跡の外に更に幾分か勝れたる手段を説きあるものにして他の諸芸にて云う「中許」など云うものに似たるべく其上に一層進んで「厳秘」と云うものは極意を説きたるものなれば即ち「奥許」とも云うべきものなるべし故に家元にて門弟に教ゆるに先ず普通の定跡を以ってし次に口伝の部を教へ、いよいよ上達するに及び又は特別の事情あるものに対して厳秘の部を教えしものなるべし。
故に昔に在りては此書を一時に見ることは容易ならざりしならんが幸いに今日之を一書に編して刊行することを得るに至りしは之れ亦文明の余沢なるべし。
要するに、伊藤家に入門→普通の定跡を教えてくれる→入門して暫く経つ→口伝を教えてくれる→門弟の中でも実力者になる→厳秘口伝を教えてくれる。
とまあ、このようなシステムになっていて、昔なら何年も精進しないと(しかも強くならないと)見られなかった内容を今回公開するんです。
話代わりますが、これって極意書みたいなもんですよね。これが武芸だったら秘伝をめぐって忍者が奪い合うとか想像してしまいますよね。(伊賀の影丸は面白かったなあ。)
まあ兎に角、昔の奥義を見て下さい。
番号 | 内容 |
1 | 平手駒組相掛り一番 |
2 | 平手相懸り二番横歩取り |
3 | 平手相懸り三番横歩取り |
4 | 平手四番(相掛り) |
5 | 平手五番(相掛り) |
6 | 六番ガンギ戻り |
7 | 平手七番五六銀組 |
8 | 平手八番向四間五六銀位の駒組 |
9 | 平手九番二十八手組 |
10 | 平手十番宗看流 |