将棋神駒

 「将棋神駒」は「相川治三吉」の明治十八年〜明治二十年迄の実戦集である。この本自体は上下二巻の手書き本が国会図書館に収蔵されていたのみで、幻の手合い集である。
 そもそも今の人は相川治三吉自体を知らないと思われるので紹介したい。
 「相川治三吉」生没年不詳であるが、明治18年11月17日の対局が11歳と言われているので、明治7年頃の生まれと思われる。東京・本所石原町の床屋の息子で、明治20年・13歳の頃には三段の実力があったという。明治24年に五段に昇段したが、明治25年1月17日伊藤宗印との角落を最後に忽然と消えた。「近世将棋巨匠の手合」平岩米吉著には「明治24年8月、重い脚気によるとも、仙台方面において賭け将棋に勝って、恨みの凶刃に倒れたとも言われている。」とあるが、明治25年の角落ちが残っていることから、誤りと思われるが、いずれにしろ若くして死亡したものと思われる。
 伊藤宗印11世名人門下で、兄弟子に笠寺小僧と呼ばれた小菅剣之助名誉名人・弟弟子に宝珠花小僧と呼ばれた関根金次郎13世名人で相川治三吉自身は本所小僧と呼ばれ、宗印門下の3羽ガラスと呼ばれていたらしい。
 「将棋神駒」は書き誤りが多く、清水考晏氏が平成七年〜八年に自費出版した「相川治三吉手合集」・「相川治三吉手合集(中)」を底本とし、管理人が更に棋譜に検討を加え再修正したものを発表することとした。
 対戦相手の棋士も現代では知られていないので、「将棋名匠物語」坂本一裕著より主な対戦相手について引用したい。
 @伊藤宗印 52局 師弟選が133局の内4割を超えている。宗印がいかに相川治三吉に期待していたかが解る数字であろう。
 A多賀常容 18局 前身は武士であり、江戸番町に住んでいた。
 B関澄伯理 13局 盲目の身で七段の高位に進み、80歳の天寿を保った。初段当時、四段の市川太郎松と香角十番勝負を演じた。
 C榊原靖  7局 橘仙斉の後身と言われ、下山桂香とも号した。将棋の文献を多く書き残している。
 D島田粂吉 7局 江戸に住み、五段に進んだ棋士。
 E太田震斎 7局 学者であり、明治時代の中堅棋士
 F佐久間大吉 6局 片目であり、「指さずに、にらんでいれば、必ず勝てる」と言うのが口癖だった。浅草に在住し、五段に進んだ。
 G平岩米吉 6局 棋士と言うより、むしろ棋士の後援者。手合集に「近世将棋巨匠の手合」がある。
 H小菅剣之助 5局 兄弟子。伊藤宗印の後継者を目されていたが、実業界に転進し、大成功を収めた。後に神田辰之助八段昇段に絡む将棋連盟分裂では仲介役を果たし、それらの功績により、初の名誉名人を贈られた。

番号 対局者 手合い 番号 対局者 手合い
1 伊藤宗印・相川治三吉 四枚落 68 平岩米吉・相川治三吉 右香落
2 小菅剣之助・相川治三吉 飛落 69 関澄伯理・相川治三吉 左香落
3 小菅剣之助・相川治三吉 飛落 70 佐久間大吉・相川治三吉 左香落
4 米寅・相川治三吉 平手 71 多賀常容・相川治三吉 左香落
5 津村又喜・相川治三吉 平手 72 関澄伯理・相川治三吉 左香落
6 関澄伯理・相川治三吉 角落 73 関澄伯理・相川治三吉 角落
7 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落 74 小菅剣之助・相川治三吉 左香落
8 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落 75 小菅剣之助・相川治三吉 左香落
9 榊原靖・相川治三吉 角落 76 多賀常容・相川治三吉 角落
10 関澄伯理・相川治三吉 角落 77 多賀常容・相川治三吉 角落
11 関澄伯理・相川治三吉 角落 78 多賀常容・相川治三吉 角落
12 関澄伯理・相川治三吉 飛落 79 多賀常容・相川治三吉 左香落
13 関澄伯理・相川治三吉 飛落 80 関澄伯理・相川治三吉 飛落
14 関澄伯理・相川治三吉 飛落 81 相川治三吉・小野川 平手
15 関澄伯理・相川治三吉 飛落 82 太田震斎・相川治三吉 角落
16 平岩米吉・相川治三吉 飛落 83 榊原橘叟・相川治三吉 左香落
17 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落 84 榊原橘叟・相川治三吉 左香落
18 小菅剣之助・相川治三吉 角落 85 榊原橘叟・相川治三吉 角落
19 多賀常容・相川治三吉 角落 86 平岩米吉・相川治三吉 飛落
20 多賀常容・相川治三吉 角落 87 平岩米吉・相川治三吉 飛落
21 佐久間大吉・相川治三吉 飛落 88 島田粂吉・相川治三吉 左香落
22 佐久間大吉・相川治三吉 飛落 89 島田粂吉・相川治三吉 角落
23 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落 90 多賀常容・相川治三吉 角落
24 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落 91 多賀常容・相川治三吉 左香落
25 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落 92 太田震斎・相川治三吉 角落
26 島田粂吉・相川治三吉 飛落 93 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落
27 島田粂吉・相川治三吉 飛落 94 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落
28 佐久間大吉・相川治三吉 飛落 95 佐渡完次郎・相川治三吉 左香落
29 佐久間大吉・相川治三吉 飛落 96 佐渡完次郎・相川治三吉 左香落
30 小野五平・相川治三吉 飛香落 97 関澄伯理・相川治三吉 角落
31 島田粂吉・相川治三吉 左香落 98 多賀常容・相川治三吉 角落
32 平岩米吉・相川治三吉 飛落 99 多賀常容・相川治三吉 左香落
33 関澄伯理・相川治三吉 角落 100 榊原橘叟・相川治三吉 角落
34 徳山銀之助・相川治三吉 左香落 101 島田粂吉・相川治三吉 飛落
35 徳山銀之助・相川治三吉 平手 102 島田粂吉・相川治三吉 左香落
36 伊藤宗印・相川治三吉 飛落 103 太田震斎・相川治三吉 角落
37 伊藤宗印・相川治三吉 飛落 104 太田震斎・相川治三吉 角落
38 伊藤宗印・相川治三吉 飛落 105 小松三香・相川治三吉 角落
39 伊藤宗印・相川治三吉 飛落 106 平岩米吉・相川治三吉 角落
40 伊藤宗印・相川治三吉 飛落 107 佐久間大吉・相川治三吉 左香落
41 伊藤宗印・相川治三吉 飛落 108 鈴木鉄五郎・相川治三吉 平手
42 伊藤宗印・相川治三吉 飛落 109 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落
43 伊藤宗印・相川治三吉 飛落 110 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落
44 伊藤宗印・相川治三吉 右香落 111 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落
45 伊藤宗印・相川治三吉 飛落 112 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落
46 伊藤宗印・相川治三吉 飛落 113 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落
47 伊藤宗印・相川治三吉 飛落 114 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落
48 伊藤宗印・相川治三吉 飛落 115 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落
49 伊藤宗印・相川治三吉 飛落 116 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落
50 伊藤宗印・相川治三吉 飛落 117 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落
51 伊藤宗印・相川治三吉 飛落 118 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落
52 伊藤宗印・相川治三吉 左香落 119 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落
53 太田震斎・相川治三吉 右香落 120 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落
54 多賀常容・相川治三吉 左香落 121 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落
55 多賀常容・相川治三吉 左香落 122 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落
56 太田震斎・相川治三吉 左香落 123 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落
57 多賀常容・相川治三吉 左香落 124 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落
58 榊原橘叟・相川治三吉 左香落 125 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落
59 榊原橘叟・相川治三吉 左香落 126 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落
60 多賀常容・相川治三吉 左香落 127 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落
61 多賀常容・相川治三吉 平手 128 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落
62 多賀常容・相川治三吉 左香落 129 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落
63 上藤三治郎・相川治三吉 左香落 130 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落
64 太田震斎・相川治三吉 左香落 131 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落
65 多賀常容・相川治三吉 左香落 132 伊藤宗印・相川治三吉 飛香落
66 相川治三吉・竹中 平手 133 伊藤宗印・相川治三吉 飛落
67 伊藤宗印・相川治三吉 飛落

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